【OISTレポート】寝たきり予防に 高齢者の虚弱病態

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高齢者の寝たきり予防に光を当てる発見

世界規模での高齢化の進展に伴い、身体機能だけでなく認知機能の低下も含む「フレイル(虚弱)」などの加齢性疾患が増加し、現在、全世界で1億2000万人の高齢者(65歳以上)がフレイルであると推定されています。フレイルの状態になると歩行困難や記憶力の低下に苦しみ、ゴミ出しや掃除などの生活に必要な作業が難しくなります。フレイルは治療により健康な状態に戻る可能性があると言われていますが、その治療法はまだ確立されていません。
この度、OISTのG0細胞ユニットは京都大学大学院医学研究科との共同研究で、フレイルの原因と、健常な状態に戻す可能性に光を当てる発見を行い、PNAS(米国科学アカデミー紀要)にも掲載されました。

フレイルと相関するメタボライトを特定!

研究では、認知機能を測定するEdmonton frail scale (EFS)、Montreal cognition assessment (MoCA-J)、運動能力を測定するTimed Up and Go Test (TUG)という3つの臨床検査を用いて、75歳以上の高齢患者19名を調べました。血液サンプルを採取し、メタボライト(血液を構成するアミノ酸、糖、ヌクレオチドなどの小分子)を詳しく調べた結果、131個のメタボライトぼうち、22個がフレイル、認知機能低下及び可動性の低下に関連していることを突き止めたのです。

G0細胞ユニットの技術員である照屋貴之博士は、「血液中のメタボライトは、フレイルの兆候・症状を発見、診断、モニターするためのバイオマーカーとして使うことができます。」「血液検査という簡単な方法で、軽度な段階から診断を開始することができ、早期介入によって健康寿命を延ばすことが可能になるかもしれません。」と説明します。

同定された22個のメタボライトは、抗酸化やアミノ酸、筋肉、窒素代謝などに関連するものでした。そのうち15個はフレイルと相関し、6個は認知機能の低下を、12個は運動機能の低下を示しました。フレイルと相関するメタボライトで、認知機能マーカーと重複したのは5個、運動機能マーカーと重複したのは6個でした。


メタボライトと加齢に伴う病態との関連を示すベン図

この22個のメタボライトには、同研究グループが2016年に報告した健康な人の老化マーカーの一部が含まれています。このことは、血液バイオマーカーを測定することにより、個人の間で異なる生物学的な老化強度を老齢初期よりモニターできることを示唆しています。

「特に、フレイルの患者では、抗酸化成分であるエルゴチオネインの値が低下していることがわかりました。エルゴチオネインには神経保護作用があります。これは、フレイルの人が酸化ストレスに対してより脆弱な状態にあるということを意味します。」と柳田教授は説明します。


OIST G0細胞ユニットの柳田充弘教授と照屋貴之博士

研究では、他の加齢性疾患と比較しても、フレイルは特異的な代謝物プロファイルを持っていることが明らかになりました。メタボライトとフレイルの症状との関連性を示した今回の発見は、フレイルの診断や治療の新たなアプローチにつながる可能性があります。

今回の研究は、OISTのG0細胞ユニットの研究者と、京都大学大学院医学研究科高齢者医療ユニットの亀田雅博医師、近藤祥司准教授との共同研究で、OISTと京都大学は共同で特許を出願しています。

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