【OISTレポート】環境汚染物質の漏れを最小限に!次世代太陽電池の課題を「自己修復」ポリマーで解決

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現在、大気中の二酸化炭素濃度が人類史上最高レベルを記録し、極度の悪天候が発生する頻度が増え続けています。そんな中、世界は化石燃料に依存する従来のエネルギーシステムから、太陽光などの再生可能エネルギーへと移行しようとしています。

2009年には、桐蔭横浜大学グループによってハロゲン化鉛系ペロブスカイトを利用した太陽電池が開発されました。ペロブスカイト太陽電池は、特殊な結晶の構造をした物質を材料にした太陽電池で、エネルギー変換効率の向上スピードと低コスト製造の観点から、将来的な商用太陽電池として注目されています。

100 cm2のペロブスカイト太陽電池
写真1:100 cm2のペロブスカイト太陽電池

しかし、このペロブスカイト太陽電池の実用化には、鍵となる重要な課題があります。それは、特に極端な気象条件下において、鉛などの汚染物質を環境に放出する可能性があるという事です。

この度、OIST及び沖縄県恩納村、学長ピーター・グルースら沖縄科学技術大学院大学の研究者たちは、ペロブスカイト太陽電池の汚染物質の漏出防止にエポキシ樹脂製の保護層が役立つことを発見しました。「自己修復」ポリマー層をペロブスカイト太陽電池表面に施すことで、環境に放出される鉛の量を劇的に削減できるということがわかったのです。

Nature Energyに発表されるこの研究を指揮し、エネルギー材料と表面科学ユニットを率いるヤビン・チー教授は以下のように述べています。
「ペロブスカイト太陽電池は手頃なコストで太陽光を電気に効率的に変換しますが、鉛を含有しているという事実は、無視できない環境問題を提起します。」
「鉛を使わない、いわゆる『鉛フリー』技術は研究に値しますが、鉛を使った場合と同等の効率性や安定性を実現できていません。そのため、環境への漏出を防止しつつペロブスカイト太陽電池に鉛を使用する方法を見つけることは、実用化に向けた重要なステップです。」

最悪の気象条件で鉛の漏出量をチェック

チー教授のチームは、OIST技術開発イノベーションセンターのプルーフ・オブ・コンセプトプログラムの支援を受け、どの材料が鉛の漏出を最も防止するのかを調査しました。まず、ペロブスカイト太陽電池への保護層の追加に関して、いくつかのカプセル化方法を調べ、異なる材料でカプセル化された太陽電池を、実際に想定される種々の天候をシミュレートするよう設計された一連の条件にさらしました。

強打したペロブスカイト太陽電池モジュール
写真2:強打したペロブスカイト太陽電池モジュール

研究者らは、鉛の漏出量の最大値を知るために、最悪の気象条件を想定してテストをしました。まず、太陽電池を大きなボールで強打し、激しいひょうを模倣し、次に、太陽電池を酸性水につけ、漏出した鉛を環境に運ぶ雨水をシミュレートしました。質量分析法を用いて酸性雨を分析し、太陽電池から漏出した鉛の量を測定したところ、エポキシ樹脂カプセル層が鉛の漏出量を最小限に抑え、その量は試験を実施した他の材料よりも大幅に少ないことがわかりました。

すぐれた「自己修復」特性がポイント!

エポキシ樹脂はその「自己修復」特性により、大雨を含む日光、雨水、温度を変化させた多くの気象条件下でも、他のカプセル材料よりも優れた性能を示しました。例えば、激しいひょうで構造が損傷した後でも、ポリマーは日光で熱せられると部分的にその形状を変えて修復することができるので、太陽電池内部から漏出する鉛の量が制限されます。この自己修復機能により、エポキシ樹脂は今後の太陽光発電製品に最適なカプセル層となる可能性があるといいます。

ただし、この研究で使用したエポキシ樹脂は有力な候補であって、他の自己修復ポリマーの方がさらに優れている可能性もあるとのこと。チー教授は「現段階では、太陽光発電産業の標準化を積極的に推進し、この技術の安全性についての議論に資することができた。次の段階では、これらのデータを基にどのカプセル化が最も優れているかを確認することができると考えています」と述べています。


写真3: ペロブスカイト技術を商業化に一歩近づけた研究者たち。左から大野勝也グループリーダー、筆頭著者の一人チュウ・ロンビン研究員、ヤビン・チー教授(ともにOISTエネルギー材料と表面科学ユニット)

今回課題となった鉛の漏れの他、ペロブスカイト太陽電池を太陽光パネルに拡張するという別の課題も存在します。パネルとなると数メートルと大きくなり、わたしたち消費者にとっても、より関連性のあるものとなってきます。これらの課題の他、研究チームは再生可能エネルギーの貯蔵という長期的な問題にも注目していくとのこと。

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