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「ウィズ/アフターコロナ」を踏まえた沖縄観光に関するミニ意見・アイディア

【名桜大学:大谷】2020年度 大谷研究室のOKINAWA41記事作成基本方針

●はじめに
今回このテーマを選定した理由としては、現在のコロナ禍の中で経営的に打撃を受けている企業が多いなか、沖縄観光における小規模観光事業者の現状を憂慮したことがきっかけである。たとえば、沖縄でネイチャーツーリズムを提供している小規模事業者の1社が、2020年の4月以降一切の予約がなくなりその後、自粛に伴い一時的に休業する流れとなり大変厳しい現状であることが伺える。沖縄を代表する観光地である国際通りでも、普段であれば多くの観光客で賑わっているがコロナ禍の影響により、多くのお土産店や飲食店が休業し国際通りから人通りが消えるという状況に陥った。このような状況、さらには今後の再流行の可能性もあるなか、沖縄県内の多くの小規模観光事業者が直面した危機と捉えて考えていきたい。

1.背景
2011年に発生した東日本大震災以来、沖縄の入域観光客数は増加の一途をたどり2019年には前年比を3.2%増で1016万3900人となり過去最高の観光客数を更新した。また、観光収入も同じであり入域観光客数の増加に伴って2019年には前年比4.4%、308億8500万円の増加で7256億7800万円であった。順調に伸びていた入域観光客数であったが大きくブレーキを掛けたのが新型コロナウイルスの流行である。世界各地での感染拡大により、沖縄でも2020年2月を皮切りに減少し始め、沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)の推測では、5〜8月では、入域観光客数は前年比の285万人減で77.3%の減少が推測されている。また、観光消費額では、240億円の減少が見込まれている。この影響により、観光産業は大きな打撃を受けると思われる。
沖縄の観光産業を支えているのはホテルや航空、大型ショッピングセンター等だけでなく、地元企業の飲食店、お土産や特産品を販売する小売業、ダイビングやカヌー等の自然体験を提供する企業など多くの小規模観光事業者が沖縄の観光を支えている。この数多く存在する小規模観光事業者へのケアがこれからの沖縄観光の回復期にも大きな影響を及ぼすと思われる。

2.内容
今回のテーマでの具体的な提案としては、まず沖縄県内にある小規模観光事業者の現状把握が最優先事項である。次に、現状把握が完了すると現場の声に応じてスピード感のある小規模観光事業者への直接的な支援を行うことである。
沖縄では、6月17日現在、県内のコロナウイルス関連による倒産企業は、2社とされている。この2社は業種も違い一概に比較はできないが、本島以外の離島や県外に店舗を持つなど決して小さい企業ではなかったことが伺える。このような企業が影響を受けるということは、小規模観光事業者への影響が少ないとは考えにくいのではないだろうか。また、県外の事例になるが、東京都練馬区の飲食店で4月30日に店主が焼身自殺をする事件があった。休業中でも必要経費は発生するため、小規模観光事業者にとって先行きの見えない状況は大きな不安になり得ると考えられる。現場での先行きの見えない不安の声や現状に細かく耳を傾けることで、小規模観光事業者の不安は少しずつ取り除いていけるのではないだろうか。さらに現場で何が起きていて何が求められているのかを把握することは、次への対策と支援に繋がっていくと考えられる。
次に、スピード感のある小規模観光事業者への直接的な支援についてである。現在、政府は小規模事業者への支援として持続化補助金や持続化給付金などの支援を行っている。また、沖縄県独自の支援としてコロナウイルスの感染対策などを行う事業者向けに協力金や支援事業などを行っている。しかし、補助金の受け取りでの課題が指摘され、多くの事業者が困窮していく中で、申請できる補助金への問い合わせが殺到している状態である。少しでも早くお金を受け取り事業の存続に繋げたい事業者に素早くお金が行き渡っていない現状があるといえるだろう。
静岡県御殿場市では、4月8日に全県に先駆けてナイトクラブやキャバレーなどに対して休業要請を行った。さらに、休業要請に応じた店舗に対して上限100万円まで売上の保証を打ち出したのである。接客業であり、感染拡大に繋がりやすい場所から早めに対策を行ったのである。休業に対しての保証が早急に行われた例である。休業状態であっても、賃貸料金などの固定費の支払いは続いていくため、利益がない中でこの状況が続けば経営を継続していくことは難しいと考えられる。そのため御殿場市の様な早急の直接的な支援が求められるのである。

コロナウイルスの影響で欠航となり閑散する国際線チェックインカウンター(撮影地.那覇空港 2020年7月13日)

 

 

3.実現可能性
この2つの提案に対しての課題は、まず小規模観光事業者への現状把握をどのようにして行うかである。沖縄県で5月20日に行われた県と医療関係者、14の民間団体で行われた会議では会議時間が1時間で終了したことや大きく進展した内容の会議が行われず不満が残る結果となった。事業者が求めている内容のリサーチやヒヤリングを行う際課題としては、いかに事業者サイドに立った視点で対話できるかではないだろうか。会議を行った事実が重要なのではなく、事業者に対して濃い内容のヒヤリングが実施できるかが重要である。ヒヤリングを行う県と事業者が一体となって取り組む姿勢が重要であり問題解決への一歩であると考えられる。またヒヤリングの方法としては、現在でもコロナウイルスの感染の脅威が払拭できないので、オンラインの活用や確実な三密回避の中で行われることが望ましい。
次に、事業者へのスピード感のある直接的な支援であるが、これには行政の力が大きく必要になってくる。財源の確保や予算の組み替え、承認やどのようにして事業者へ予算の配分を行うのかが課題として挙げられる。また、この課題で最も重要なことは直接的かつスピード感である。今日、明日が懸かっている事業主にとって動きが早いことが何よりの助けになるからである。申請の方法や基準など、難しく複雑な内容では問い合わせが殺到し、またもスピード感が失われた対応になる可能性がある。そのため、申請の方法や基準などは分かりやすく簡略化することも対策の1つに挙げられるだろう。事業者へのスピード感のある直接的な支援は、予算の調整などがあるためヒヤリングの提案より実現可能性が低いことが考えられる。しかし、観光産業が大きな支えになっている沖縄県では、より重要な課題として認識するべきではないだろうか。

●おわりに
今回のテーマを考えるにあたって痛感したのは官民の連携の大切さである。沖縄の観光の現状や将来を常に考え、民間と行政のどちらかの都合や利益、考えに執着しないこと、民間と行政との立場や普段の考えが異なる業種であってもお互いの立場を考えられることが問題解決の突破口や発展になると考えられる。また、今回扱えない課題としては、観光回復期に発生する問題に対しての対策や、これから同じような状況が発生した際の対応をマニュアル化すること、平常時からの小規模観光事業者と行政の関わりを再考することなど多岐に及ぶ。観光回復期へのステップは未だ不透明ではあるが、今回の教訓をさらなる沖縄観光の発展に繋げることが望まれる。

【引用・参考文献】
・沖縄県 (2018)『平成29年度版 観光要覧』
・沖縄県 (2019)『【暦年】平成30年の観光収入について』沖縄県文化観光スポーツ部観光政策課

【引用サイト】
・「沖縄への観光客、5~8月は77%減 新型コロナ影響で OCVBが推計」沖縄タイムス
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/590523 (2020年7月13日閲覧)
・「新型コロナウイルスの影響に対する経済支援策」沖縄県ホームページhttps://www.pref.okinawa.lg.jp/site/shoko/seisaku/kikaku/covid-19/keizaisiensaku.html(2020年6月17日閲覧)
・「令和2年(2020)3月入域観光客数概況」沖縄県ホームページhttps://www.pref.okinawa.jp/site/bunka-sports/kankoseisaku/kikaku/statistics/tourists/documents/r2-3gaikyou.pdf
(2020年6月17日閲覧)
・「2019年の沖縄の観光客 前年比3.2%増の1016万人 年度目標達成は『厳しい』」
沖縄タイムス+プラスhttps://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/525899
(2020年6月17日閲覧)
・「『銘苅そば』破産申請へ コロナ倒産、県内2例目に」沖縄タイムス+プラスhttps://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/584623 (2020年6月17日閲覧)
・「国の『持続化給付金』支給まだ? 電話つながらず…事業者や自治体困惑」西日本新聞https://www.nishinippon.co.jp/item/n/617229/ (2020年6月17日閲覧)
・「足りない賃料補助、飲食店を追い込む遅い政治 少なすぎる経済援助が現場を苦しめている」
東洋経済ONLINEhttps://toyokeizai.net/articles/-/354704 (2020年6月17日閲覧)
・「コロナ感染者ゼロの『御殿場市』100万円の休業補償をなぜ直ぐに決定できたのか? デイリー新潮https://www.dailyshincho.jp/article/2020/04191400/?all=1(2020年6月25日閲覧)

■筆者
名桜大学国際学群観光産業専攻
大谷ゼミ3年次 渡橋 拳斗(2020年6月末作成)