投稿日:2024.04.17

宮古上布、若い力で未来へ繋ぐ伝統工芸の今

日本の三大上布(上質の麻糸で織った軽く薄い織物)の一つ、「宮古上布」をご存知でしょうか?
沖縄県宮古島で作られる織物で、1978年に国の重要無形文化財に認定された伝統工芸です。

宮古上布の由来と歴史

その歴史は16世紀末まで遡ります。
琉球から明へ向かう貢物を乗せた船が台風で沈没しそうになったところを、宮古島で暮らす一人の男性が助けました。琉球王国がその男性の功績を称え、間切頭主※(まぎりとうしゅ)に出世させたところ、喜んだ妻が織物を献上。これが宮古上布の始まりだと言われています。

※間切頭主:琉球の位階

宮古上布の魅力

宮古上布の最大の特徴は、繊細な絣(かすり)模様です。

宮古上布の原料は、沖縄地方で古くから自生する苧麻(ちょま)と言われる植物からできていますが、この苧麻(ちょま)の茎から取れる繊維を、1本ずつ手で裂いて作った極細の糸で作られる織物なのです。繊維がとても細く、この極細の糸で作り出す繊細な模様が、宮古上布の最大の魅力と言われています。

あらゆる工程が手作業

こちらは、実際に苧麻(ちょま)から繊維を取り出す様子です。なんと貝殻を使ってひとつひとつ手作業で繊維を取り出して糸を作ります。その後、藍や植物染料による染め、締機や手括りによる絣括り、手織り、砧打ちなどの工程を経て、ようやく上布となります。
その工程の複雑さや難易度から、一反の着尺を織り上げるのに最低でも3カ月はかかるそうです。
宮古上布が最高級品と言われる理由はここにあります。

若い力で未来へ繋いでいきたい宮古上布の文化

素晴らしい伝統工芸である宮古上布ですが、次世代の担い手不足が深刻な状況だと語るのは、宮古織物事業協同組合 専務理事の浦崎さん。「宮古上布作りをやってみたい」という人はいても、それ一本で生計を立てるのは現実的にはなかなか難しい現状があるそうです。

「宮古上布の伝統を残したい。でも今までのやり方では難しい。新しいことにどんどんチャレンジしていかないといけない」と浦崎さん。

独自の販路開拓や、仕上がりまで時間のかかる宮古上布とは別に、日常遣いで使える麻製品の開発など様々なことにチャレンジしているそうです。

宮古上布だけでなく、量産化できない伝統工芸品は同じように存続の課題を抱えているところも多いですが、手作業で時間をかけて作りあげられた作品の温かみは、量産製品では生み出せないもののひとつです。

「日常にある何でもない思い出が実は大切なものだって思うんです。子どもの頃は、独特の藍染めの匂いが嫌いでした。でも大人になって久しぶりに匂いを嗅いだら、あの頃の思い出が蘇ってきて…胸にくるものがありました。伝統工芸というか、その土地に根付いているものってそういう存在なんじゃないでしょうか。そんな感覚を子ども達にも残してあげたい。」と浦崎さんは思いを語ってくれました。

▼苧麻(ちょま)