沖縄と豚文化2-食育、地産地消、物語~島豚七輪焼 満味~
「豚は鳴き声以外、すべて食べる。」この言葉を聞いたことがありますでしょうか。
この記事では、まずシリーズ1として沖縄の豚文化を紹介しました。今回のシリーズ2では、沖縄島北部地域の名護市にある焼肉店「満味(まんみ)」を取材した際の貴重なお話を紹介します。
「命どぅ宝」を食卓から伝える焼肉店
沖縄北部・名護市の静かな通りにひっそりと佇む焼肉店「満味(まんみ)」。観光客や地域の人々に長く愛されてきたこの店では、単なる「おいしい」だけではない、深い想いが皿の上に込められています。その中心にあるのが、店主・満名(まんな)さんの哲学は「命をいただく以上、2度殺しはしない。料理は丁寧に、最後まで大切に」。
2度殺しとは何か
「2度殺し」という言葉。これは、すでに命を終えた動物の肉を、ぞんざいに扱って浪費することを指します。食材に敬意を払わずに扱うこと、むやみに焼きすぎたり、タレでごまかしたり、残したりすることは、命を軽んじること」と同じ。そう語る満名さんの言葉には、沖縄で育まれてきだ命どぅ宝(ぬちどぅたから)=命は宝という価値観がしっかりと根づいていると感じます。

アグー豚を、丁寧に焼く
満味で提供されるのは、沖縄が誇る「アグー豚」や「やんばる島豚」。脂が甘く、赤身とのバランスも絶妙で、じっくりと火を入れることで旨味が際立つ。焼きすぎない。焦がさない。急がない。
お客さん自身が、命と向き合うようにゆっくり焼くことも、この店ではひとつの体験になります。「ただ焼いて食べるのではない。豚肉の声を聞いてほしいのです。」そう語る満名さんは、焼き方や食べ方も丁寧に教えてくれました。
食育としての「選べる」500円
現代の子どもたちは、食のファスト化にさらされ、500円あればハンバーガーやポテトを買って「すぐ食べてすぐ終わる」ことができてしまいます。しかし、満名さんは同じ500円で、子どもたちと一緒に沖縄そばやジューシーを作ります。薪を割り、出汁をとり、時間と手間をかけて完成させる食の体験を通じて、「食べるとはなにか」「なぜ命をいただくのか」といった問いを自然に投げかけているのだと思います。しかし、それは押しつけではなく、子どもたちが自分で選ぶ「食の選択肢」を広げる取り組みであると語ってくれました。
地産地消が生む“最高の一日”
満味の豚肉は、「我那覇畜産」で育ち、近隣の屠畜場で処理されている。味が変化しやすい豚肉を、いつでもベストな状態で届けるためには、生産者との密な連携と、店との距離が非常に重要です。満味の哲学は、「この地域で育った豚を、この地域で食べていただくこと」で、やんばるの風土、人、自然があって初めて生まれる味を、地で完結させるという考え方です。遠く離れた地で同じ味を再現するのは、恐らく不可能と思われます。
物語ごと味わう「語りの場」
満味では、スタッフや店長ができる限り焼き加減を見守りながら部位ごとの焼き方や豚にまつわる「物語」を教えてくれます。単なる焼肉店ではなく、食材の物語ごと味わう語りの場でもあるわけです。
沖縄の知恵が詰まった一皿「スーチカー」
満味で出される前菜のひとつに「スーチカー」がある。これは豚の塩漬けで、沖縄の家庭に昔から伝わる保存食の知恵が詰まっている一品です。かつて冷蔵庫のなかった時代、豚肉を塩で漬けることで日持ちさせ、貴重なたんぱく源として大切に食べられてきたスーチカー。塩気の奥に豚の旨みがしっかりと感じられ、お酒との相性も抜群です。このシンプルな料理には、「食を無駄にしない」という満味の理念と、「いかに命を長く活かすか」という沖縄の知恵が込められているのです。

沖縄の”内”を知る「中身汁」
もうひとつ、満味で体験してほしい料理が「中身汁」。これは豚の内臓(中身)を丁寧に下処理し、澄んだ出汁で煮込んだ伝統的な汁物です。臭みを丁寧に取り除いたやさしい味わいは、体にも心にも染みわたります。「中身汁」は、お祝い事や行事でも振る舞われる沖縄のごちそう。豚は鳴き声以外すべて食べるという文化を体現する一品でもあり「余すことなくいただく」という精神が、器の中に詰まっています。
島豚七輪焼 満味
食べる」は命をいただくこと、という名護の焼肉店「満味」は、ただのグルメスポットではなく、食べることの意味をもう一度考えさせてくれる場所、「命どぅ宝」という言葉をただ知るのではなく実際に“味わう”場所であると考えます。沖縄を訪れたなら、ぜひこの場所で一食を通して、命に対する敬意を感じてほしいなと思います。
【店舗詳細】島豚七輪焼 満味
沖縄県名護市伊差川251番地
【営業時間】
営業時間 : 17:00~22:00(ラストオーダー) お食事 21:00、 ドリンク 21:30
定休日 : 日曜日・月曜日
Instagram @shimabuta_manmi
問い合わせ 0980-53-5383(予約はできるだけ16時以降、繋がりにくい場合もあります)
名桜大学国際観光産業学科大谷研究室 平安名玲加・宇宿優花・島崎笑実
参考資料
・「満味」店主の満名さんへのインタビュー記録
・島豚七輪焼 満味 https://manmi-yanbaru.com/