観光地化されていない島、多良間島で古くから受け継がれている「八月踊り」を全日程楽しんできた
日本一美しい村連合に加盟している人口約1,200人の多良間村は、宮古島と石垣島の間にあり、サンゴが隆起してできた丸い形の多良間島と水納島の2つの島からなります。
多良間島の周囲は約20km。島へのアクセスは宮古島からフェリーで約2時間、または飛行機で約20分です。この島の主な産業は、サトウキビの栽培と牛の畜産業。毎年旧暦の8月8日〜10日までの3日間で行われるのが、国指定重要無形民俗文化財の八月踊りです。
2018年は9月17日〜19日に開催され、その全日程を見学してきました。
八月踊りは、本来の名称が「パチュガツウガン(八月御願)」であることから、かなり古い時代から始まっていたと言われています。
穀物税などの税金をその年の旧暦7月までに完納して、8月には各御嶽に完納の報告とお礼を述べ、神前で「奉納踊り(皆納祝い)」をすることが慣例となっており、互いに納税の苦しみを慰め合い、励まし合ってきたものとされています。
多良間島で創作された獅子舞や棒踊りなどの「民俗踊り」と、首里を中心とした沖縄本島からもたらされた「古典踊り」や「組踊り」が、朝10時から夜8時頃まで続きます。
狂言座や組座では、たらまふつ(多良間方言)でセリフが述べられ、気の利いたアドリブが出ると会場からはドッと笑いが起こっていました。
八月踊りは島内の2つの拝所で行なわれ、1日目は仲筋字の土原ウガンにて、2日目は塩川字のピトゥマタウガンにて踊りを披露し、3日目は別れと称して仲筋字と塩川字がそれぞれの拝所で同じ演目を行ないます。
当日は、朝8時から集落に響く拡声器を通して三線の音色が鳴り響き、出かける準備をしながら高揚感を感じずにはいられませんでした。
八月踊りの舞台裏では、10時間にわたって約60曲を三線と歌で演奏する役割の地謡(ズーニン)座、衣装や幕・旗・小道具の一切の装飾や準備を担当する支度(スタフ)座などいくつもの組織で運営されています。
1日の最後は、出演者やその子どもたちが舞台に上がって、4拍子ずつ片足に重心を置き三線のリズムに合わせて弾みながら舞台を一周するのですが、最終日は出演者の皆さんがとびきりの笑顔で踊っている姿が清々しく、本当に素晴らしい3日間だったと改めて感じました。
島の方曰く、「島の人口が減って後継者がいないのが課題で、八月踊りの存続が危ぶまれている」とのこと。子供たちや若者に受け継ぐことでしか継承できないこの文化財は、見る人たちを魅了して止まない多良間島で必見の伝統行事です。
(文・撮影/籠田 清香)
籠田 清香(こもりた さやか)プロフィール:
2018年3月、仕事の転勤で福岡から沖縄に移住。沖縄の文化/言葉/風習/グルメに興味を持つ。沖縄に住んでいるからこそ知ることのできた情報を伝えるのが好きで、WEB記事やブログを通して発信している。
Twitter:https://twitter.com/happy_saaya0614
ブログ :https://saayanoblog.com/