投稿日:2020.06.25

満産祝いと童名~先祖から受け継がれる伝統~「特別寄稿⑥ 尚本家23代当主 尚衞」

皆さん、こんにちは。

今回は沖縄の伝統である「満産祝い」と「童名」についてお話しさせて頂きたく思います。
沖縄で生まれた子供には、満産祝い(まんさんゆーえー)というお産の7日目に産婦の忌み明けの儀式と、命名を報告して産まれた子供の成長を祝う儀式がございます。
また、沖縄の子供には童名(わらびなー)という、沖縄独特の名前が付けられます。
現在使われている太郎君や花子さんは大和名(やまとなー)というものでありまして、沖縄では明治以降に使われるようになったものです。

童名は、男性ならトゥクやマニュなど、女性ならナビーやウシなどと付けられます。
これは琉球王国時代に平民、士族、王族により童名の敬称がそれぞれ決められておりました。
また、童名は親が決めるものではなく、本人が勝手に名乗り決めるものでもなく、先祖から一定の法則で、与えられるものであります。

この度、私事ですが私の娘に子供が誕生致しました。私にとっては孫でございます。
その為に早速、尚本家に伝わる先祖の法則により童名を孫に名付け継承式と満産祝いを致しました。

沖縄では名前より先にまず童名を決めるのが慣わしになります。
産まれる前に名前は決まってないが、童名だけは決まっているというお話しはよく耳に致します。

童名の決め方はその地域の風習や一族により異なりますが、必ず一定の法則が伝わり決め方が定まっております。
ある地域では、籤に一定の一族の童名を記入して、その籤引きにより決める、という所や、籤も回数が決まっていたりします。
ですから子供は与えられた童名により先祖を意識し、家系における自分の位置を常に認識できるようになっておりました。

継承する童名により、自分は何を先祖より継承するか、所謂立場が決まっているのであります。
今の沖縄の子供は大和名を名乗りますが、古い家であればあるほど、童名の継承はきちんとしております。
今でも沖縄の空港では、放送など童名で呼ばれている場合もあります。
それを聞きますと、少し微笑ましく思います。
御清明祭が1700年代から始まり、徐々に沖縄に浸透していきましたが、完全に王家まで浸透するには時間がかかりました。
しかし、童名は第二尚氏王家では1400年代には受け継がれ、今年で605年の伝統があります。元琉球王族として、尚本家もきちんと童名を継承しております。童名により自分が一族の中でどの立場に立たねばならないか、それこそを伝えたく存じます。
その為、自分自身で立場を勝手に名乗ることが出来ない事がよく解るかと思います。
立場とは法則により先祖より受け継がれ、最終的には適正があるかどうか当代の当主が判断するものであります。
自分自身や周りが判断し簡単に名乗れるものではありません。それが家というものを受け継ぐ者の責務であります。私も未熟でございますが少しずつ努力をして継承させて頂いております。

この度は孫の童名がきちんと継承されご先祖に報告式が出来ました事、ほっと致しました。皆様もぜひ先祖から続く己の命の流れを意識頂けたらと思い、今回コラム記事にさせて頂きました。

【筆者】
尚 衞(しょう まもる)
尚本家第23代当主。
1950年生まれ。
玉川大学卒業後、アメリカアラバマ州、サンフォード大学(Samford University in Birmingham Alabama U.S.A)にてMBA取得。
一般社団法人 琉球歴史文化継承振興会代表理事として務める。

◆一般社団法人 琉球歴史文化継承振興会

一般社団法人琉球歴史文化継承振興会