ものづくり特集:日本最西端の与那国島の民具づくり

「よなは民具」で作っている笠、ウブル、状差し

日本最西端の与那国島は飛行機では那覇空港から1時間20分、石垣島からだと30分。石垣島からのフェリーでは3時間30分の距離にあります。台湾から111kmの距離で年に数回は台湾の山々がみえることもあるそうです。

この与那国島で生まれ育った與那覇有羽さんは、沖縄本島出身の桂子さんとご夫婦で「よなは民具」を営んでいます。材料は主にクバ。取材した1月、与那国島の冬は雨季のような感じで雨が多く風が強いと寒くもなります。

「よなは民具」は本業にして5年ほど経ちます。ネット上でもほとんどインフォメーションがなく、情報を集めて探し出して注文をしたり、ワークショップをお願いしたりというお客様が絶えず毎日忙しく作業されています。手仕事だから数は増やせない、それくらいで丁度いいのだそう。そんな与那国の魅力を体現しているご夫婦のお話は魅力がいっぱいでした。

 

子供の頃から島の暮らしが好き

ライブ演奏の様子

沖縄本島で学生生活を送りましたが、唄、踊り、民具、食、全てにつながりを感じる島の暮らしが好きです。子供の頃からそれらが身近にありました。

クバの葉で民具などを作りながら、与那国の民謡・歌謡・伝承歌を唄う『風の吹く島~どぅなん、与那国のうた~』のCDアルバムも出ていて、家族で各地で演奏・講演なども行っています。

唄ったり弾いたりは好きだからやっていて、相当やらないとできないことだから、民具作りの方が得意かな?

作業しながら歌の練習もします。民謡は昔は仕事をしながら唄っていたのですが、今は踊りのときに残っているくらいです。例えば進水式の歌でも、下げ節上げ節と、同じ曲でもメロディや掛け合いを変えて歌ったりします。

歌を唄うことは民具作りにとても役立つんです。歌と仕事はくっついているのでそれぞれから勉強するんです。普段鍬を持つ機会はありませんが、踊りでは鍬で耕す動きがあったり、民具作りで道具を使っているからこそ、踊りの時の動きをイメージできたり、仕事をしているときの心情を理解できたりします。

あんまり細かい作業、危ない作業の時は唄いませんが、淡々とした作業の時はリズムが一定なので、歌で調子をとりながら作業すると、士気も高まるというところもありますね。

沖縄民謡「ナンタ浜」に歌われたナンタ浜

 

民具作りはどこで習得?

作っている人(祖父母やご近所の方)を見たり、「与那国民族資料館」があり、よく通って見ていました。池間苗さんが蒐集した与那国の民具を展示する私設の資料館です。物心ついた時から一日中、草刈り鎌で竹や木を削ってなんでも作って遊んでいましたね。何かを作ることが大好きです。

クバは近所で酒の瓶を包んだり、祖父が農作業や海に行くときの自分用のクバ笠を作っていたりするのを見ていて、一見難しそうですが、日用品なので作り方は何回か見ていると工程がわかってきて、自分で試してみたりしていました。

 

高校では郷土芸能部

踊りや三線をやる部活に所属していましたが、弾くのがあまり得意じゃないので踊りの道具や、獅子舞を作っていました。妻は針仕事が得意でそこで着物の襦袢を縫っていました。二人とも郷土芸能や何かを作るのが好きなんです。今は依頼があったものを作ったら作り方を教えて、一緒に量産して、毎日てんやわんやしています。

 

クバとはどんな植物?

クバの若い芽

クバ(ビロウ)はヤシ科の常緑高木で葉は掌状に広がり、大きいものは2メートルにもなります。クバは台風でも折れず、塩害にも強く、与那国島では山一面がクバで、初めて見た方が驚かれるほど自生しています。12月〜3月は成長が悪くなるので山に入って新芽を取ってはいけない時期です。

私のところは所有の畑に植えているので材料を採ることができるので一年中制作できます。環境に適応するので、生えている場所で木も葉も全然違います。背の低い木から柔らかい葉っぱを採ってきます。

加工もとってもしやすく、夏で3日くらい乾燥させて、冬は雨が多いので室内で乾燥機を使うこともあります。葉の色も、採った時で緑っぽかったり白っぽかったりしますが、自然のままの色です。新芽の時の葉は閉じていて蛇腹になっていて、開いたものは扇状の形をしています。

 

クバは様々なところで活躍

戦時中は葉の葉脈を抜いて海軍用のたわしを作っていたそうです。茎はカゴに編んだり、乾燥したらたわしに。子ども用の三線も作れます。棕櫚のような、毛の部分からは箒や縄ができます。幹も道具になります。椰子科で外側が硬く中が柔らかいのでくり抜いて底を閉じて桶にします。

古武術の道具、トンファーやヌンチャクも作りますが、100年以上の古い木で太いものを作ると、コンクリートブロックが割れるくらい硬いんです。

日本では昔からクバは使われていて、宮崎県の青島という天然記念物になっている場所にもクバがありますね。古事記や日本書紀にも登場する「阿遅摩佐(あじまさ)」はクバのことで、大嘗祭に使われる小屋の屋根、牛車の屋根を覆っていた「檳榔毛の車」に使われているのもクバです。

衣・食・住全般に使える素材なんです。

クバの葉を乾かしているところ

 

食べても美味しい、全部使える植物

道具だけではなく、「食」でもクバは活躍します。「クバ餅」は葉に包んで蒸したものですが、実や花も食べます。花は咲く前が苦味もなくて美味しいです。柔らかい幹のところは少し甘みがあり筍とレンコンの間みたいな不思議な食感。煮る、揚げる、炒める、何でもあい、茶碗蒸しの具などにいいです。

灰汁は少ないですが酸化しやすいので皮を剥いてすぐ茹でます。先程の古い言葉、「阿遅摩佐(あじまさ)」は美味しい、甘いという意味が由来なのです。畑を持っているのでたまに食べますが、幹を切っても筍の皮を剥くように、食べるところはほんの少し。叔母がたまに作るクバの葉弁当とか、昔から食べていた人は美味しいことを知っているので、食べたがります。

 

水汲みの道具ウブル

猫のベットにも!

ウブルは一枚の葉でできています。室内でカゴとして使ったり、光を通すので、インテリアの照明に使ったりされています。
もちろん昔からの使い方で水汲みにも使え、大きいのを作ると、2、3リットルは汲めます。乾燥した葉が汲む時に水を吸うのでやわらかくなり、破れにくいですよ。葉を曲がりたくない方に反らして固定するので(人で言うとブリッジ状態ですね)張りがあるんです。

同じような道具だと、木で作られた木桶や杓などありますが、木を製材したり、作るには職人技が必要ですが、クバの道具は子どもでも作れる道具なんです。

 

他によく作っている定番品

なんでも作るんですが、ウブルや杓以外だとコースター、縄、笠、籠、草履をよく作ります。草履は、葉で作業量も履き心地も違うので、アダン葉(1万円〜)、月桃(8千円)、クバ(6千円)と、ランクを分けてます。クバはかなり硬いです。

クバ笠は与那国型のクバ笠が人気があります。沖縄の笠は勾配のきつい三角の形ですが、与那国の笠はてっぺんが平な富士山のような形。これは漁師が船で水を汲み出すのに使うために竹を細かく入れてとても丈夫で10年くらい使えると思いますよ。手仕事の細やかなもので格好がいいので釣り人からの注文があります。

舞踊用の踊る人の要望を聞いて作る笠もありますね。与那国の踊りでは畑用の三角の笠を使います。

 

注文や依頼に合わせた活動

ワークショップでウブルを作る様子

コロナ禍になる前は毎年沖縄本島や東京でもワークショップをしていたり、与那国島に来た方が連絡をしてきて、民具体験や使い方の実践などもしています。大人の・民具好きの方が参加してきます。

「よなは民具」は販売店ではなく工房なので、お買い物はできませんが、調べて訪ねて来られる方には、留守でなければその場で作ってあげたり、30分くらいでできるものもあるし、一緒に作ったりしますよ。近くに宿があるので、散策していてここなんだろう?と入ってくる方もいらっしゃいます。

個人の方からのオーダー以外は小さなお店や問屋さんからの注文なので、それぞれのお店合わせた商品を扱っていただいています。定番の形というのはあるけれど、注文に合わせて形は変えます。使う人に合わせる幅があるのが民具の良さです。

沖縄本島の瑞穂酒造が与那国島の黒糖を使ったラム酒「YONAGUNI ISLAND RUM(ヨナグニアイランドラム)」を作ったのですが、瓶の一部をクバで包んだものを販売しました。与那国島のお土産として泡盛をクバの葉で包んだ瓶が売られていますが、昔からの製造元のみに許可されています。

 

今後の活動は?

3月に「OKI OKINAWA LIVE -DAY2- ”北からの音・南からの音”」というライブがあります。Okiさんという方の奄美民謡とアイヌ音楽のコラボレーション・プロジェクト「Amamiaynu(アマミアイヌ)」というセッションが2019年にありました。11月に妹が中心で童歌のCDを出した会社からの繋がりでお声かけ戴いての開催です。

子どもが今、中学生、小学生、幼稚園の年頃で、この仕事場でも遊んでいます。女の子はクバの葉でアクセサリーを作ったり、長男は教えていないけれど縄綯いをしたり、釣りの笠を欲しいというので簡単なのを作ってあげたりしていて、今後興味を持ってくれたらいいなと思っています。

東崎の与那国馬

 

information

よなは民具

お問い合わせはFacebookかInstagramアカウントからお願いします。

Facebook:@yonahaminngu
Instagram:yonaguni822

 

「よなは民具」の製品を扱っているお店
(お店によって在庫や品物は違います)

沖縄県内:
りゅう(読谷村)・ゆいまーる沖縄(南風原町)・苔吉(石垣)

県外:
世界のかごカゴアミドリ(東京・国立)・たくみ(東京・銀座)など