琉球芸能のゆかり#5 春にまつわる琉歌

琉球芸能のゆかり#5 春にまつわる琉歌

二月も終盤、春に向けてもう少し寒い日々が続きますが、皆さまはいかがお過ごしでしょ
うか。ピンク色の鮮やかな花が咲き始めてきましたね。

そう、「桜」です!

沖縄は全国よりひと足早く、桜が満開になりましたね。そこで今回は、「桜」のワードが
入ったステキな琉歌をご紹介します。

と、その前に、琉歌について簡単な説明をします。

実は琉歌にも俳句や短歌のように形式があります。
基本的に「八・八・八・六」の30字で構成されてるため、同じ〇〇節でも、歌詞の内容
を置き換えて色々な詩で歌うことができるのです。

例えば、沖縄県民にはお馴染みの「かぎやで風節」だと

・今日のほこらしゃや 何にぎやな譬る 莟でをる花の 露行逢たごと
読(キユヌフクラシャヤ ナヲゥニジャナタティル ツィブディヲゥウルハナヌ ツィユチャタグトゥ)
意:今日のうれしさは 何にたとえようか つぼみだった花に露がついて 花が咲いたようだ
が定番で歌われている琉歌ですが、お正月などになると、

・新玉の年に 炭と昆布飾て 心から姿 若くなゆさ
読(アラタマヌトゥシニ タントゥクブカザティ ククルカラスィガタ ワカクナユサ)
意:新しい年を迎えて 炭と昆布を飾り 身も心も若くなるようだ
というように、同じかぎやで風節ではありますが、三線や楽器の演奏は変わらずに、歌詞
の意味が異なる場合があります。

全体的に「かぎやで風節」はめでたい時や喜ばしい時に歌われますが、その中でも、歌う
場面や状況によって、その場にふさわしい詩を選び歌うことができるのも、琉歌の魅力の
ひとつです。
伝えたい想いやのせたい言葉を、「八・八・八・六」の中にしっかりとおさめながら表現
していたと考えると、当時の国は違えど、日本人が俳句などを詠んでいたのと同じで、琉
球の人も同じような手段で思いを残してきたのかなと感じました。

さて、琉歌の説明をしたところで、今回紹介する桜ワードの歌は「白瀬走川節」です。
シラシハイカーと読みます。ここでは1番の歌詞を説明します。

・白瀬走川に 流れゆる桜 掬くて思里に 貫ちゃいはけら
読(シラシハイカワニ ナガリユルサクラ スィクティウミサトゥニ ヌチャイハキラ)
意:白瀬走川という川に 流れている桜を すくって愛しいあなたに ぬいてかけてあげましょう

白瀬走川は、久米島にある「白瀬川」という河川のことで、「走川(ハイカー)」とは流
れの早い川という意味です。
琉球舞踊にも貫花(ヌチバナ)という糸で貫かれた赤と白の花を首からかけて踊ることが
あり、続く2番の歌詞には、赤い糸や白い糸というワードが出てきます。赤い糸でぬいた
貫花は愛しいあなたへ。白い糸でぬいた貫花は少女へ。その白い糸を、まだ少女のあなた
がいずれ大きくなったら、意中の人に自分色に染めてあげなさいよ、という意味合いが込
められています。

この「白瀬走川節」は、古典舞踊「本貫花(ムトゥヌチバナ)」にも使われており、川を流れて
いく桜の様子を表現しながら貫花を使って踊ります。
また、古典舞踊とは別の雑踊り「貫花」の中で歌われる武富節(ダキドゥンブシ)にも白瀬走
川節の歌詞が使われています。

実際に、久米島には白瀬走川節の歌碑が立てられているので、気になる人はぜひ!
本当に川に桜が流れていく様子が見えるのか気になりますね…!
最後に、私が白瀬走川節を歌ってみたので、ぜひ聴いてみてください♪

 

新型コロナウイルス感染症の影響でなかなか外出ができない時期なので、周りの人にも協
力していただき、みんなが撮った桜の写真と共に動画でお届けします。
事態が収束して、大切な人たちに気兼ねなく会える日が、1日も早く来ることを願って。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

《Writer Profile》
照屋綺恵(てるやきえ/ TERUYA KIE)
沖縄県立芸術大学 琉球芸能専攻2年次 / 琉球古典音楽三線
三線×箏からなる琉球古典音楽ユニット「Re:finesse ~リフィネス~」で活動中。

https://twitter.com/kietarou_03
https://instagram.com/refinesse_rcm