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かつて、琉球王国時代には、天然痘、風疹、コレラなどの疫病が流行した時がありました。ひとたび蔓延しますと大変恐れられたのは、当時としては当然のことです。

古来、沖縄には独自の悪疫祓い御願があります。悪疫は旧暦の十月に発生しやすいもので、その為に旧暦の十月を「カリジューグヮチ(涸れ十月)」とよんでいたほどです。

沖縄では年間を通じほぼ毎月何らかの行事がありますが、十月だけは例外でした。

お祭りがありますと大義名分のもと、仕事を休んだり、供物のウサンデーのお酒やご馳走を頂けました。
しかし、十月はめぼしい行事がなく、その為に働き詰めで、毎日芋料理を食し栄養も枯渇した状態であり、この様に心身ともに涸れ衰えた状態の中、悪疫が発生するという事がありました。

その為、悪疫から人々の身を守る為に集落ごとに行われたのが、シマクサラシ、カンカー、シマーなどと呼ばれる行事であります。

これは旧暦十月~十一月、または、二月~三月、六月~八月など地域によって時期に違いはありますが、その内容は大方似通っています。
集落の入口となる道などに、牛や山羊、豚といった家畜の骨や肉をくくりつけたヒジャイナー(左ないの縄)を張り、集落の内と外との間に結界をめぐらせます。
この行事の家畜の屠殺は集落の人々が共同で行い、その肉や血は各家庭に分配され、肉は調理して食し、血には悪疫を遠ざける呪力があるとされた事から、分配された家では外壁や戸口に塗ったり、木の枝につけて屋敷の四隅や門口に挿したりしました。

動物の生き血を用いた魔除け行事は、知らない方には驚きをもって捉えられますが、興味深い風習でもあります。

「ビンシー」

多くの各集落では、その地域のムートゥーヤー(宗家・本家)の代表が、それぞれの家の「ビンシー」を持ち寄ります。
さらに集落内の男性が広場に集まって、牛や豚の肉をさばいた後に重箱に詰めて、地域の神役が(集落によっては区長などの場合もある)ビンシーと共に拝所に持参し、悪疫祓いを行います。

拝み方は簡単で、お酒と花米(洗っていない炊く前のお米)をお供え物として並べ、ヒラウコーをタヒラと半分(二枚と半分=12本と6本)を、イビに捧げて拝みます。
儀礼を結んだ後は、牛や豚の肉で料理したお汁を皆でいただき、一連の沖縄の御願行事は終了です。

現代では、流行病の予防や治療の技術が進歩し、沖縄でも「シマクサラシ」を行う集落は少なくなりましたが、皆様に少しでも沖縄の悪疫祓い行事を知って頂きたく、今回お話しさせて頂きました。
一日も早い世界各地での新型コロナウイルスが終息しますように祈念申し上げます。

筆者:尚 満喜(しょうまき)
1984年生まれ。
自由が丘 産能短期大学卒業
神職資格を取得し、現在は東海地方にて神職として神社に奉職しながら一般社団法人 琉球歴史文化継承振興会の副代表理事を務める。

◆一般社団法人 琉球歴史文化継承振興会
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