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【名桜大学レポート】
ホテルを中心とした消極的「マイクロツーリズム」-ホテル、屋外スポット、アウトドア

「ウィズ/アフターコロナ」を踏まえた沖縄観光に関するミニ意見・アイディア

【名桜大学:大谷】2020年度 大谷研究室のOKINAWA41記事作成基本方針

●はじめに
2020年7月上旬、沖縄県では徐々に日常を取り戻しつつあるが、国内全体の新規感染者も抑えられていたことから7月末に国が支援するGo To トラベルキャンペーンが実施され、国内観光者の流入が増えることが予想される。沖縄県在住の筆者として、正直のところ不安もあり、その背景には沖縄の医療設備、特に沖縄県内離島の医療設備が非常に貧弱であること、また高齢者も多く重症化しやすいといった懸念がある。
加えて、今までの自粛ムードでのストレスや不満を晴らすかのように、沖縄で羽目を外しすぎないかが心配であるため、筆者は多少消極的な観光を視野に入れながら、屋外スポットおよびアウトドアとホテル等との往復に留めてもらうような工夫を提案する。

1.背景
沖縄の新規感染者は5月6月と確認されなかったため、沖縄県内では県民を対象とした「沖縄彩発見キャンペーン」が始動している。国内の動きとして、7月末から政府が支援するGo To トラベルキャンペーンが開始されるため、徐々に国内観光者が増えることが予想されている。その際には、コロナ禍前の高次欲求とは異なり身体の回復や健康状態の維持など欲求の低次化が見られる傾向にあり、それに伴い観光者の行動も屋内よりも屋外スポットやアウトドアの人気が高まるであろう。そこで、屋外スポット、アウトドアに焦点を絞ると共に多少消極的な観光の工夫としてホテル等との往復に留めてもらうような、ある意味での消極的なマイクロツーリズムが考えらえられるではないだろうか。
しかし、その工夫を提案するためにはいくつかの課題があり、1つ目に観光客が実際に屋外スポットとホテルの往復だけに留めてくれるのか、そして2つ目が、沖縄観光の魅力である人、文化、食などを楽しむ機会が半減してしまうにではないか、といったことが懸念される。現状として接客は必要最低限であり、沖縄の伝統文化を披露する機会が少なくなってしまっている。3つ目が比較的安全といわれている屋外スポットの感染予防は十分であるか。現在営業再開している店舗では、入園前の検温やアルコール消毒、従業員のマスク着用を行っているが、人が増えた場合やまた海などの比較的出入口が自由な屋外スポットのコントロールが課題となるだろう。それらを改善するためのアイディアを考案する。

2.内容
まず1つ目のホテルと周辺スポット等を中心としたマイクロツーリズム実現の課題に対するアイディアとして、1泊2食付きを1泊1食付きと同じ値段で提供してみてはどうだろうか。現在、沖縄彩発見キャンペーンの対象となるホテルでは朝夕2食付きの提供をしている施設が多くあるが、それは6月限定で7月からは1食とマリンスポーツ等の宿泊特典を実施するホテルも多い。そこで、多少消極的な観光の面から1泊2食付きを推進し、沖縄料理や泡盛を通常より増やして提供したり、食事を楽しんでもらうためにお客様が食べたい沖縄料理を前日にリクエストでき、翌日のメニューにしたりすること等の工夫を提案する。リクエストを受ける際は、オンラインで簡単に回答、集計することができるグーグルフォーム等を用いて行うことで、積極的にホテル内のレストランを利用しようと思うきかっけに繋がるのではないだろうか。しかし、ホテル側での消費が完結してしまい、周辺地域への波及という面では課題が残る。
次に楽しみの創出という2つ目に対するアイディアとして、ホテルの屋外ステージを用いて遠隔で沖縄の文化を披露することを提案する。現在、沖縄の伝統芸能であるエイサーや組踊などを披露する機会がなく、収入が激減した実演家が大勢いる。他県の支援をみると北海道札幌市では、札幌市文化芸術公演配信補助金を設け、文化芸術公演活動を支援している。その内容は、「文化芸術活動を行っている方が無観客公演を動画配信する活動を募集し、審査のうえ補助を行う」とし交付額は団体200万円、個人50万円を上限とし50件ほど交付予定である。札幌市のように沖縄県も伝統文化維持のために、行政が支援することを求められている。既存のアイディアではあるが、その動画配信をホテルの屋外ステージで流すことで観光者の満足にも繋がるのではないだろうか。
最後に安全対策の3つ目に対するアイディアとして、場合によって入場制限を行うことを提案する。動物園やテーマパークなど、出入口が明確な屋外スポットは比較的感染予防しやすく入場制限も行いやすい。しかし、海などのどこからでも入場できてしまう屋外スポットは不安が残るままである。その例として、イングランドでは週末の3連休に海沿いのリゾート地に数千人単位の観光者が集り、そのほとんどがマスクをしておらず、ソーシャルディスタンスも確保できていなかった。BBCは「『準備不足』だったと批判し、より良い『管理』を行えば人々が互いに距離を取れるはずだと指摘した。」一方で政府のガイドラインが制限のない運動を認めていることから、「警察や自治体には人々の来訪を止める権限はない」との意見もあり、規制緩和された日本でも同じような問題が起こり得るだろう。そこで国内では、感染予防の面から海水浴場の開設を断念する地域もあるが、「中止しても監視員がおらず、海や砂浜の安全確保がおろそかになる『無法地帯化』の懸念も出ている」と東京新聞が報じている。このことから、海などの感染予防は十分ではなく不安の多い屋外スポットになってしまうことが分かる。そこで沖縄県では、その不安を少しでも取り除くために、海の出入り口を可能な範囲で制限、従業員が入域者の数を把握し、ソーシャルディスタンスの確保を呼びかけるべきなのではないだろうか。

3.実現可能性
1つ目のアイディアであるマイクロツーリズム推進のための1泊2食付きは、ホテル側の負担が大きく沖縄彩発見キャンペーンのような支援策がないと厳しいと考えるが、食べたい沖縄料理のリクエストは簡単なフォームで回答を得ることができるため、実現可能性は決して低くはないだろう。しかしホテルでの消費完結になってしまうのではないかという懸念があるため、解決のアイディアとしてホテル近隣の飲食店から取り寄せたパンやスイーツ、お菓子や飲み物などの軽食を提供することはどうだろうか。提供には限りがあるが、ホテル周辺地域への波及という面からは有効であり、また1泊2食付きのアイディアの実現可能性を高めてくれるであろう。
2つ目のアイディアは、ホテルの屋外ステージを用いて遠隔で沖縄の伝統芸能を披露することは可能だが、それをどうコロナ前に収録された映像と差別化することができるか。加えて、JTB が行った意識調査によると、「国内旅行に『早く行きたい』と考えているのは、男女29才以下の若者で、性別では男性が高い。女性60才以上は、旅行意向はあるが、どの旅行も『しばらく行きたくない』」とあり、果たして沖縄の伝統芸能文化の披露が若年層のニーズになるのかなどの課題があげられるため、実現可能性はまだ低いと考える。
3つ目のアイディアは、地方自治体の協力は必要不可欠となり、地方自治体の協力によって実現可能性が左右されるだろう。また、海に訪れる観光者にも地元住民にも理解が求められるため、実現可能性は比較的低いのではないかと考える。しかし、海の出入口制限は感染予防面で大きな効果と安全が期待できることを上手く伝えることができるなら、実現可能性は高まるであろう。

●おわりに
本意見文では、多少消極的な観光を視野に、屋外スポットおよびアウトドアとホテル等との往復に留めてもらうような工夫を提案した。しかし、ホテルと地域飲食店との連携や、沖縄の伝統芸能文化をどのように若年層にも楽しんでもらうか、海岸の出入口制限や人数制限の理解を広められるか等の課題が残された。
また、県をまたぐ移動が6月19日に解除されてから、確実に観光者の数が増えていることを肌で感じる。沖縄県民の生活と命を守るために多少消極的な観光を提案することに、ご理解頂ければ幸いである。

 

【引用・参考文献】
・JTB総合研究所(2020)『新型コロナウイルス感染拡大による、暮らしや心の変化および旅行再開に向けての意識調査2020』https://press.jtbcorp.jp/jp/2020/05/2020-4.html

【引用サイト】
・「札幌市文化芸術公演配信補助金の概要」札幌市ホームページ(2020年6月23日閲覧)
https://www.city.sapporo.jp/shimin/bunka/corona/haishinhozyo/gaiyou.html
・「コロナ対策で『海水浴場』のない夏 監視員不在で海が無法地帯化?」東京新聞
https://www.tokyo-np.co.jp/article/35422(2020年6月30日閲覧)
・「英リゾート地、ロックダウン緩和で大混雑地元に懸念と怒り」BBC NEWS JAPAN
https://www.bbc.com/japanese/52765258(2020年6月30日閲覧)

■筆者(2020年7月上旬作成)
名桜大学国際学群観光産業専攻
大谷ゼミ3年次 呉屋 七海