Uchina−アーティシズム#1 今を輝く。挑戦の琉球舞踊家②

「ヒトを通してオキナワを知る」をコンセプトに
オキナワの感性の魅力を発信します。

Uchina−アーティシズム#1 今を輝く。挑戦の琉球舞踊家①

前回に引き続き、琉球舞踊家の西村綾織さんについてご紹介します。
今回は後半編!


女性の琉球芸能活動

琉球芸能は元々、男子のみで作られる芸能として発展しました。
琉球王朝時代にできた組踊は現在まで大切に継承され、平成17年度からおきなわ国立劇場では、より質の高い優れた若手を確保し、組踊の保存継承を目的とする「組踊研修生」制度が設けられました。研修期間である3年間は無料で研修を受けることができ、実践的なカリキュラムが組まれ、舞踊や楽器について発声法や身体づくりなど基礎的なことから学ぶことができます。人間国宝をはじめとする各分野の第一人者が直接指導を行うとても充実した制度です。しかし、伝統的な継承ということもあり、研修生になれるのは中学校卒業後の原則30歳未満の男性のみという決まりがあります。
(参考:おきなわ国立劇場「組踊研修生」について

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芸大で組踊を学んだ女性として。
そう前置きから始まった西村さんの言葉には力強いものがありました。

「芸大で組踊を学んだ女性の立場として。国立劇場ができたあとに研修制度が男性だけということもあって、女性は?となった人は多いと思います。今は女性の活躍も増えていますが、男性よりもチャンスが少ないので、だったら自分たちで作ろうよと結成したのが“女流組踊研究会めばな”なんです。これは、大学院(沖縄県立芸術大学院)まで修了した女性のメンバーだけで、新しく入ってくる人を合わせても17名くらいしかいないんです。大学ができてからの30年ちょっとで、大学院まで進んだ女性がそれくらいの人数しかいないのが現状なんですよね」

—- たしかに、17名ってかなり少ないですよね。院まで進んでいるという条件はなにか理由があるのですか?

「学部だけでみるともっとたくさんいるんですが、院まで進学するのはやっぱり特別だし、さらに深く学んでいる人たちということで、質や格を上げていくために院を卒業したメンバーということになっています。なんでもそうなんですけど、自分で行動しないで待っているだけでは、運や巡り合わせ、繋がりもやってこないと思うんです。だから、この17名のこれからがとても楽しみですね」

決まりが変わることや、今あることが変わるのを待つのではなく、やりたいなら自ら進んでやることが、これからに繋がると話す西村さん。海外での公演や様々な経験を積んだからこそ、沖縄で活動する意味があるといいます。

—- 海外公演の経験もあるなかで、沖縄で踊り続ける理由はなんですか?

「県外の学校などで、解説をすることもあるんですが、琉球王朝からの歴史が本当に凄いなと思っていて。それが今も受け継がれていることを誇りに思うので、好きだからこそ本場に身を置くのがベストだなと思って沖縄を拠点にしています。さっきも話したように、ここまで経験を重ねてくると、やっぱり私にも子どもがいますし、次の世代へ伝えていく役目があるなって思っていて。舞踊をきっかけに、沖縄の昔の文化を伝えられたらいいなって思っています」

琉球古典舞踊「かせかけ」琉球料理 美榮にて。
琉球伝統芸能デザイン研究室 こちらをcheck

コロナ渦は進化

新型コロナウイルスの影響で思うように活動ができないなか、西村さんはInstagramやFacebookでライブ配信を行い、SNSなどを通して活発的に活動してきました。

—- インスタグラムで毎朝配信をされてますよね!なにかきっかけがあったのですか?

「毎朝配信はそろそろ200回くらいになるんですよね笑 今は舞台活動もないので、なにか始めたいなって思ってる時にライブ配信している人が結構いるなって思ったんです。それまではSNSを見てすらいなくて、本当は喋るのも得意ではないんですが、習慣づけないと克服できないなと思って、まずは1週間のお試しでフェイスブックとインスタグラムを同時進行で始めたんです。そしたら意外と見てくださってる方がいたので、明日からやめますとは言い出せない状況になってしまって…笑 朝7時の配信ってみんな忙しい時間帯のはずなのに、沖縄と繋がりたい!って見にきてくれる方たちがいて、それならちょっと続けてみようかなと思って今に至ります」

—- 結構リアルタイムで、皆さんコメントしてくださってますよね

「そうなんですよね。一方的に話すだけではなく、自分が話した言葉について皆さんがコメントで返してくれるのですごく助けられています。そこでコミュニケーションができるツールもありがたいですね。でも、コロナがなかったら挑戦していなかっただろうし、自分も進化していなかったと思うので、すごくイイ進化ですね。今は毎日が楽しいです。舞台はできないけれど、できることはほかにあるので。待っていてもなにもこないし、自分が動く事によって面白い発見だったり、新しい人との繋がりがもてたりするんですよね」

—- 本当にすごい活動だと思うのですが、毎朝早起きして7時に配信するのは大変じゃないですか?

「去年の末から舞台が一切無くなって、その影響で夜の稽古が無くなったんです。それで、子どもたちと過ごす時間が増えて、一緒に9時ごろに眠るようになりました。そのおかげで、夜の稽古が終わって12時過ぎに帰宅して1時頃に寝る生活が改善されて、早起きできるようになりました」

—- 思わぬところでコロナの良い影響ですね!

「そうなんです!早く起きれば自分の時間が作れることを発見して、今では5時起きです。 お家のことをやりつつ、いろいろやって、そしたらウォーキングも始められたし、寒くなると家でできることをやろうと思って配信も始めることができました」
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朝の配信のほかに、月に一度開催している「いづみ&綾織のSATURDAYナイトはオンラインで沖縄!」では、三線演奏者の比嘉いづみさんと、月ごとに変わるゲストを招いて新しい琉球芸能の魅力を発信しています。


オンラインライブの様子


三線×ウッドベース×琉球舞踊(ウッドベース奏者: 浦谷仁美さん)


三線×胡弓×琉球舞踊のライブ配信での記念撮影(胡弓奏者: 山崎麻里緒さん)

—- 舞踊家として、母親として、子育てや家事もしながらそういった活動をするのは大変ではないですか?

「そうですね…頼ったりするのが苦手なので、子どもを産んでからは思い立った時にすぐやるというのを心がけて、後回しはしないようにしています」

—- そういうふうに、めげずにやってこれた考え方などはありますか?

「大変だから、コロナだから、という余計なマイナスな考え方はしていなくて、この時期だから何かできることはないかなとか、逆の発想をするようになりましたね。これがチャンスかなとか。パソコンも全然触らなかったんですけど、家にいる時間が増えたので触るようになりました」

—- なるほど。私の周りでも、コロナの影響で活動が止まってしまった人が一気に増えた印象があったので…

「そうですね…お金を学びに入れて、今までやったことのないものに投資したりすると、視野も広がって繋がりも増えましたね。誰と一緒にいるかで環境が本当に変わるんです。だから、手の届かない人かもしれないけれど、少し先にいっている人たちと繋がることを意識するようになったかなぁ。全然違うジャンルの人と触れ合うことも大切だと思います」

—- 発想も前向きで、すごく素敵だなと思うのですが、後悔したこともあるのでしょうか?

「子どもたちにも聞かれたりするんですけど、何歳に戻りたいとかあの時にこうすればよかったとか、後悔とかが全然ないんです。その時その時を楽しみながらやっているから、そういう気持ちになることがないのかもしれないですね」

—- 素敵ですね。1番充実しているなと感じる瞬間はありますか?

「舞踊だけではなくて、(取材を受けている)この時間もそうなんですけど、その時にちゃんと向き合っている時間や、達成するために向き合っている時間がすごく充実しているなと感じますね」

これからの沖縄と芸能活動

—- これからや、10年後の目標などはありますか?

「今よりレベルアップして豊かになってたらいいなって思います。経済面でもそうだし、心にも余裕があればいいなと。今より沈みたくないですね、キラキラしていたらいいかなぁ。常に今よりも上げていきたいし、そうすることで子供や周りの後輩たちもレベルアップしていくと思うんですよね。先輩が上をいくことで下が育つ。そのまた下の世代に繋げられるように、活発に出てくる後輩たちをサポートできる存在でありたいですね。後輩たちはそれをプレッシャーに感じず、今は一生懸命にやって欲しいです!」

—- 楽しみながら、ですよね!

「そうですねぇ。楽しみながらやっていないと、舞台に立った時に出てくると思うんですよね。体から出てくる見えないなにかが。表情にも出ると思うし、舞踊だけでなく音楽や様々なジャンルにもいえることだと思うんですけど、本人が楽しんでいるからこそ、観客にも楽しんでもらえるんだと思います」

—- これからの沖縄について考えていることはありますか?

「子どもたちが、何かひとつでも沖縄をPRできるものを身につけてくれたらいいなぁって思います。身近すぎて気がつかなかったんですが、海外に出て初めて沖縄の文化のすごさを知ったんですよね。だから、親子で沖縄文化に興味をもってどんどん触れてもらえたら嬉しいなぁって思います。でも、働きながらだとなかなか難しいので、学校教育の現場で子ども達が直接体感して、家に帰った時に“あれすごかったから習ってみたい!”というきっかけに繋がれば、親は子どもの話を受け入れて送り届けることができるし、1番ベストな方法なんじゃないかなって思います」

—- 沖縄の芸能についてもなにかありますか?

「芸能活動では、自分に値段をつけて、自分を商品としてやっていかなくてはならないので難しいこともあるかとおもいます。でも、無償ではなく、自分自身にいいものを持っているという自信があるからこそ、お金として返ってくるように値段交渉をちゃんとしていくべきだと思っています。後輩につなげていくためにも私たちの値段設定は重要ですし、お金をちゃんといただくことでさらに良いパフォーマンスができる循環が生まれたほうがいいと思います。ほかにも沖縄の芸能の課題はいろいろありますが、先輩たちの想いを受け継ぎ、次世代を担う子どもたちへの継承など、私たち世代はその間の役目にいると思います。良い循環が生まれるよう繋がりを大切に、日々感謝しながら精進していきたいです」
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沖縄の芸能について真剣に考え、自分のことだけではなく、その下の世代が育つよう活動しているお話は、色々な方々に元気を与えてくれるのではないかと思います。

取材を終えて

琉球芸能活動以外にも、ミセスオブザイヤー2021沖縄大会では、その活動と沖縄に対する想いが評価され見事グランプリを受賞するなど、挑戦し続ける姿がとても素敵でした。
今回、私が感じたことは「楽しく取り組む」ことの大切さでした。取材中「楽しく」というワードが何度も出てきたのが印象的で、こんなときだからこそ、自分の心を楽しくする生き方を模索してみる機会かもしれないと感じることができました。
活動が気になった方は是非チェックしてみてください、西村綾織さんの元気なパワーが、みなさんの日常を楽しく色づけてくれること間違いなしです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

−Reporter−
照屋綺恵/ Teruya Kie
沖縄県立芸術大学 三線演奏者
琉球古典音楽ユニットRe:finesse ~リフィネス~で活動中

取材協力
Triangle studio and lounge